WAREHOUSE & CO. FACTORY TOUR
いま明かされるウエアハウスカンパニーの生産背景
ヴィンテージのバナーを解体し、生地を織る糸から旧い手法にこだわるウエアハウスカンパニー。
今回はその糸を使い実際にデニム生地が織られる現場を取材。
ヴィンテージと見間違えるほどのデニムを再現するその中心には、
希少な力織機の存在があった。
ヴィンテージのバナーを解体し、生地を織る糸から旧い手法にこだわるウエアハウスカンパニー。
今回はその糸を使い実際にデニム生地が織られる現場を取材。
ヴィンテージと見間違えるほどのデニムを再現するその中心には、
希少な力織機の存在があった。
旧いデニムバナーを解体・解析して作った糸を使い、力織機「G3」でデニム生地を仕立てたウエアハウスカンパニーのジーンズ。ヴィンテージと変わらぬ風合いを持つ一本。
セルビッジデニム。このキーワードを解説する上で力織機の存在は欠かせない。力織機とは、緯糸(よこいと)を巻きつけたシャトルが経糸(たていと)を縫うように往復運動し、生地の両端にほつれを防止させるミミ(セルビッジ)を持たせる織機。この織り方は、狭い幅の生地を生産する非効率な旧い製法として位置づけられていたが、現在では日進月歩の技術革新で効率よく作られるようになった。しかし、今回の工場取材を通じて、改めてウエアハウスカンパニーのデニム生地の生産現場を覗くと時代に逆行するかのごとく、より旧式の力織機を求めていた。
力織機のパイオニアとして大正時代から続く豊田自動織機(トヨタ自動車の源流企業)。同社が製作した旧式の力織機「G型織機」は自動車同様、時代を追うごとにデニムをより綺麗に、均一に、効率良く織りあげるためにマイナーチェンジが施される。現在で稼働している織機で最も多く使われているのは通称「G9」、「G10」と呼ばれる織機。実際に旧い織機ではあるものの、G型織機の長い歴史から見ると高年式に位置付けされるという。
豊田自動織機が約半世紀前に開発したG3。現在国内ではかなり少ない希少な織機。
話を戻すが、ウエアハウスカンパニーのデニム生地はこのG9、G10より旧く、今から約半世紀前に作られた「G3」と呼ばれる織機を使用しているという。そして今回ウエアハウスカンパニーの生地を実際に織っている現場を見るべく岡山県井原市にある織物工場を訪れた。この工場にあるG3は、一時は役目を果たし実に20年間、埃を被っていたという。現在では旧すぎる機種だけに新品の交換パーツもなく、同型の廃棄機種から部品取りをするなどして動かしている。もちろん国内で現存する数が少ないことは容易に想像できるが、何より大変なのはオペレーションの管理だと工場の代表は語る。
「半世紀も前の旧い機械だから目を離すと止まっていることも多々あるんです。そのため常に織機の動きをチェックして、その都度メインテナンスをしなければなりません。またG3は1時間に5メートルぐらいしか織れないので、いまの機械と比較するとどうしても手間は掛かかってしまいますね」そんな工場側すらも生産効率の低さを指摘するG3。しかしその織機を使い続ける理由をウエアハウスカンパニーにも尋ねてみた。
「このG3には旧い機械ゆえに、ヴィンテージデニムが持つ独特のザラ目や、糸が本来持っているムラ感などをそのまま生地にする牧歌的な性能がまだ残っているのです。この性質はマイナーチェンジするごとに失われるので、我々の求める風合いは現段階ではG3でなければ表現できません」本来ならば綺麗に、効率よく生産するためにマイナーチェンジしていく織機に対して”性質が失われていく”と捉える考え方は、旧いプロダクツにこそ魅力を見出す同ブランドならでは。ましてやヴィンテージバナー(原反)を解析し、コットンの原料から精紡までも独自で開発したウエアハウスカンパニーの糸は、G3が作られた時代とも極めて時代感が近い。力織機と糸の時代考証までも考えて生産しているのは、世界でもウエアハウスカンパニーだけかもしれない。
織機に取り付けられたアルミプレート。一番上に”GL3 56″と表記されていることからG3の通称で呼ばれるように。
経験と知識を必要とする旧式力織機。織機から織機を巡回する姿が印象的であった。
緯糸がなくなったらシャトルにセットされる糸巻きのストック。G3ならではの旧式の機構。G9などになると、この機構は別の方式に改善される
G3で織られた生地は、ざらつき、畝感、織りムラなどヴィンテージデニム特有の風合いを醸し出す至高の原反となる。穿き込むことで、さらにヴィンテージらしい色落ちを味わえる
糸を開発する際、組織を徹底解析するために使用されたヴィンテージバナー。この糸を再現するため使われたのは米国のテネシー、テキサス、アリゾナの3州ブレンド綿で、自然なムラ糸を当時の製法に倣いリング糸を作成した
二枚の生地をラッパと呼ばれる金具に通しながら巻き縫いを施す。一定間隔に生地を送り込む技術に職人の技量が問われる
次に訪れたのはウエアハウスカンパニーのジーンズを創業以来請け負っているという徳島の縫製工場。日本の服飾業界では、ミシンが施すステッチのピッチや複数針の幅などがミリ単位でセッティングされるのが一般的。しかし、この工場ではウエアハウスカンパニー監修のもと旧いジーンズ製法、つまりはアメリカ式の製法にのっとりインチ単位のセッティングをミシンに施している。その縫製が生み出すアタリは、巻き縫いを施した部分や、生地のコバなどに顕著に表れる。その小さくも美しいアタリこそヴィンテージのような佇まいを醸し出しているのだ。
原反を大きな作業台に広げ、パターン取りを行う。生地の無駄を出さないため、型紙がパズルのようにレイアウトされる。
小股の押さえステッチも正確かつスピーディに縫われていく。職人ならではの技術が光る。
ボタンやリベットを打ち込む仕上げの工程。こちらも素早く同じ個所に打ち、次々と製品が仕上がっていく
ウエアハウスカンパニー監修によるインチセッティングを施したユニオンスペシャル製の巻き縫い用ミシン。主にバックヨークまわりなどに使用される。
ステッチのピッチから2針の間隔まですべてインチ単位で設定したミシンによる縫製。